2017年 日本語ラップトップ10曲
2017年リリースでよく聴き、思い入れの深かった日本語ラップランキングトップ10です。
■1位 : 1AM in Asahikawa / C.O.S.A.
いま日本のヒップホップシーンで最も「リリカル」なのは誰かと問われたら、間違いなく彼の名前を挙げる。
C.O.S.A.という人物について知っていることは皆無だが、彼の語る言葉には一切の嘘や虚飾がないことを、曲が雄弁に物語っている。
自身を含めた、傷つきながらも歩を進めるあらゆる周囲のものたちを、過不足のない、透徹した眼差しで見つめるこの曲が2017年のベスト。
"次の夏にはあいつがいるといいな マジでああいう奴が上手くいくといいな"
■2位 : 夢のつづき(feat.原島"ど真ん中"宙芳) / PUNPEE
「いつも限定でごめんねとか呟いてた」あの長兄がようやくアルバムを出し、期待に応えるどころか大きくそのハードルを超えていった2017年。
『Movie on the sunday』にその嫌いを見せていた、情報量の多さからくる胃もたれ感もなく、あらゆる必然を納めるべきところに納めながらもタイトに仕上がった傑作より。
誰も予想できなかった原島の起用を含め、budamunkのビートからファニーな側面を引き出す新鮮なアプローチに、改めて彼の才能を思い知らされた。
"今が夢のつづきなら いいとこまで俺ら来たよな"
■3位 : YUUKI (demo version) / Tofubeats
彼が作品毎に必ず見せる孤独や陰りは、いつも綺麗に区画整理されている。
「way to yamate」「衣替え」「別の人間」…正確に把握された彼の距離は、誰もいない澄んだ白昼夢の街を独り歩かされている気になるのだが、本年作でその役割を担う「YUUKI」もまた、人々が踊り明かす喧騒から遠く離れたところに佇み、奇妙な安堵と不安を与えてくれる。
個人的にこの手の曲は本人の歌唱がベストだと思っているので、こちらのデモの方をよく聴いた。
"ふいに放した手のぬくもり 忘れられないですこし 寂しがる"
■4位 : Star Beach Love / Qiezi Mabo
謎が謎を呼ぶプロジェクト、チェズマボ。
PUNPEEをはじめ、Rau Defや未だ謎に包まれている極on the beats、先日は宇多田ヒカルのアルバムに客演参加していた小袋成彬と思しき人物まで現れたようだが、関係者の委細は不明。
しかし彼(ら)を象徴する、このJPOPのようなポップさとドープなセンスの歪なキメラは、何かを予感させるに足る力がある。
リアルとハイプ、真摯とおふざけ、あのマスクの下で我々をせせら笑いながら、彼はこれからもきっと聴き手を楽しませてくれるはず。
"うんこのうんこによる うんこのためのうんこ"
■5位 : 会いたいわ / iri
2017年はフィメールの台頭も著しかったが、音楽に太さを感じさせる彼女の存在感は大きかった。
説得力、と言い換えても抽象的な物言いになるが、彼女の作る音楽が彼女自身のバックグラウンドや生活、価値観をそれとは言わず語りかけてくる。
この曲における発声も、今にも駆け出しそうなもどかしい距離と寂寞をそれだけで表現しており、音楽家としての豊かな才能をありありと示していた。
2018年もトップギアで駆け抜けてくれそうなのは嬉しいばかり。
"でもこの複雑に混じり合う感情 どうしたらいいか分からない"
■6位 : STARZ feat.PUNPEE / RAU DEF
この師弟の並びの安心感は、現在のシーンの中では飛び抜けて視聴の期待感を煽ってくれる。
周囲の仲間や愛する女性に向けられた眼差しというテーマだが、ヒップホップがこのテーマを扱う際に身に纏いがちな「この場所こそが全て」といった重苦しさ・排他性がなく、彼のスタイルと併せて良い意味での軽さが心地良い。
師匠のHookも含めた刹那的な美しさは、いつか必ず消えてしまう今を淡く鮮やかに映し出している。
"どうすれば国産で一番獲れるかより 仲間女とdinner"
■7位 : PenDrop feat.ISSUGI / kojoe
多くの客演を迎え、充実作と呼ぶに相応しいアルバムをリリースしたkojoeのアルバムから、ISSUGIを迎えた1曲。
正直言って評価の殆どの部分をISSUGIが占めており、PUNPEEのアルバムでも一際目立った仕事をしていた彼の2017年の確変っぷりは凄かった。
勿論ソロ作も素晴らしい作品を生み出しているが、第一声で主役どころかアルバムまで喰う客演モンスターとして、この少し妙なトラックでもここまでクールにキメられるのかと驚いた。
5lackの絡んだ「Tokyo City Lights」も素晴らしい出来だった。
"笑い出すぜ 曲がイケてると"
■8位 : 空に祈るよ / GOODMOODGOKU
長らく音沙汰がなかったが、2016年の田中面舞踏家コンピレーションの"Roll Witchu"が途轍もない名曲だったGoku Green改めGOODMOODGOKU。
荒井優作との出会いが彼を目覚めさせたのか、2017年にもリリースを残した。
"Green"な習慣は引き続いているようだが、音楽性という面ではチル&メロウ方向に大きく歩を進め、熱に浮かされたような荒井のトラックにうわ言にも似たリフレインが乗る幻想的な作風によく酩酊した。
中でもメロディの強いこの曲はお気に入り。
"今でも忘れてないよ 言葉じゃ物足りないの 夢から醒めれば空虚"
■9位 : ビッチと会う feat. DJ TATSUKI, Weny Dacillo, Pablo Blasta & JP THE WAVY / DJ CHARI
ラップが音楽である以上、歌心を持って生まれたラッパーは強い。
新世代の拡がりを見せたJP THE WAVYも参加しているが、HookのようなVerseを蹴るWenyの殆ど歌っているようなフロウは、音楽としての快楽をもたらしてくれる。
快作『AMPM』ではメロディアスなトラックの上モノに引っ張られている嫌いが少なからず感じられたが、そこからの僅かな時間に何があったのか、本曲では完全にトラックを追い越し(乗りこなし)ている。
2018年、要注目の超新星である。
"連絡先 インスタ ライン 汚れたい 遊んだらいい"
■10位 : UP IN SMOKE / MONYPETZJNKMN
Chaki Zuluの不穏ながら高揚感を煽るこのトラックを聴いた瞬間のメンバーの興奮は如何程のものだったろうか。
彼らのラップを"上手い"と感じたことはないが、稀代のトラック巧者と共に作り上げる世界観にはヒップホップの怪しく仄暗い側面を魅力的にプレゼンする力がある。
あらゆる意味での良し悪しの判断は抜きにして、下半期のJNKMANの顛末は結果として彼らのストーリーを強化したのではないだろうか。
問答無用でアガる。
"肺に溜める煙 ブリブリになるの大好き"